がしゃん。がしゃん。私はおかだに閉じ込められてしまいました、特製の、おかだお手製の、パイプの溶接はお手の物でした、鉄製のごくシンプルなワンルーム。間取りは?風通しのいい二畳のリビング、以上。がしゃんと錠を下ろして一息ついたおかだは頼むからそこでジッとしてろ。暴れるだけ無駄だ。一晩でいいから。と非常にロマンチックなセリフを述べました、そうここが、最高級スイートで、おかだが石油王だったら。もちろん石油王でなくともおかだは素敵なひとなのですが、少し焼けた頰に擦り傷をたくさん作り、顎には無精髭を生やして(ああこれはキャラデザなのでしたっけ)、鼻の頭は煤けていてボサボサの前髪は額にしっちゃかめっちゃか張り付いていました。ジッとしててくれ。
そうは言われても私は"母さん"のごはんだからなア。発症ののち数時間で所謂"帰巣本能"のような行動が見られる。感染者は母胎<マミー>への回帰を強く望み、それ以外の思考は阻害されるようになる。がしゃん。がしゃん。金網を張った扉に体当たりを繰り返す。気だるい。おかだが小さく見えた。母さんの空腹を満たすため私の細胞は過度の分裂を繰り返すことで大きく膨張し今はおかだの背丈を頭一つ分追い越している。とはいえ目線は並んでいた。全ての細胞が均等に成長するような気遣いなんて世の中どこにもありゃしない。頭は身体のてっぺんに乗ってるタァ限らない。頼むから、一晩でいいんだ!ちぐはぐに育って自由の利きにくい体をぶつけているとおかだの後ろの暗がりに何かを見つけた。ああようやっと。がしゃん。がしゃんがしゃんがしゃんがしゃん
次こそ。おかだが振り返る。
結局おかだは顔面から徐々に母さんに"帰る"ところで怒鳴り声を上げて発砲した。母胎の肉片が散らばる。弾倉が空になっても震える手で装填しまた撃った。私の頭はもういくつ目か数えられなかったけれどおかだが三度目はない!三度目は!と言ってすっかり小さくなった足元の母さんに向けてまた撃ったところで静かに後ろへ倒れた。仰け反った頭がこっちを向き眉間には小さな深淵が見える。跳弾。アァ。ばかだね。やり直そう。何処からがいい?おかだは訊く。口だけが滑らかに動いた。わたしたちがひろしまにいくところから。おかだは広島に行くのはやめにしないか。うん。いいよ。じゃよこはまは?横浜は駄目。ならおおさか。大阪?良かないさ。どこならいいの。家がいい。そっか。うちか。それから気付いたら檻に居たのはおかだで、木目調スライド式の扉を開けると電源コードで手足を括られ座っていた。何もここまで。と私は言ったけれどおかだはクウクウと寝ていた。座ったまま、器用なもんだ。
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